この記事を書いたのは?
楓橋徹
出身地:中国私は中国の海浜都市から来て、現在東京の高校に通っています。この世界は広いので、何方でも行ってみたいです。ソローが書くワルデン湖、シェイクスピアの詩のロンドン、そして松尾芭蕉の徘句のような美しい夏に日本に来ました。暇な時、空想することが好きで、時々、自分が平和な時代に生まれて嬉しくなります。その反面、これから起こりうる戦争が心配です。また、昔の戦争のせいで、その国に住む人同士の中に誤解が生まれてしまうことがあります。しかし、私は子供の時に、違う国の人と触れ合うことがありました。生まれた国は違っても、その人の優しさに感動しました。
現在多くの日本人の友達がいます。中国人として、日中の友好交流が一歩近づいて心から願っています。今回は小説の中で、歴史の残した問題を違う視点から認識することができるといいなと思っています。私たちは生まれた国に関係なく、お互いに歩み寄っていきたいです
M
出身地:非公開紹介文:私は作者のお友達です。今回初めて校閲をさせて頂きました。難しかったのですが、素敵な物語だったので書いている最中はすごく面白かったです。
僕とあなたの、思い出の花。
急いでさくらを連れて塾へ向かう。
塾に着くと、教室の外で子供を待つ親のために用意された小さな椅子にさくらを座らせ、私は先生が来る前に教室へダッシュした。
フロントにいた先生はさくらを見つけると、飲み物とおもてなしのお菓子を出してくれて、さらに絵本を数冊持ってきてくれた。
私の授業が終わる11時まで律儀に座って待っていたさくらは、私を見るなり目の前のものを片付け、本を渡してくれた先生に軽く会釈をし私の方へ歩いてきた。
「君の彼女か?」と隣で同じく荷物の整理をしていたAくんが冗談交じりに言ってきた。
「そんなことはない!」Aくんはいつもバカにしてくる。
私はさくらの袖を引っ張り、塾の外へ連れ出した。
「どこへ行きたい?まずはご飯食べいこうか」私は真昼の太陽に顔をしかめた。
ということで、お昼はマクドナルドで過ごした。
あまりに眠いので、昼寝をしようと思い、彼女にも「眠たくない?」と尋ねてみた。
でも彼女はよく分からないという顔をして、私をぼんやりと見つめていた。
そこで私は、先にテーブルに伏せて彼女を横目で見てみた。
ほどなくして彼女は、私の真似をしてテーブルに伏せ、私の方を横目で見た。
私たちは顔を見合わせ微笑んだ。なぜだか分からないが、そんな思いが胸に去来した。
フラフラと眠ったあと、15時過ぎに目が覚めた。
私は彼女を海へ連れていくことにした。
この街の最も有名なものは海なのだ。
海に向かって出発する。
まずは、猫がたくさんいる通りを横断した。
その通りには漁師さんがたくさん住んでいて、どうしてこんなにたくさんの猫が集まったのかは今でも分からない。
白やジンジャー、中でも珍しいのはグレーの毛並みにミントグリーンが混じった美しいブラウンの瞳。
それは品種改良された猫ではないのだ。
その猫に初めて会ったのも夏だった。
当時はただの野良猫で、まるで遠い国から迷い込んできて、何度も何度も夏を旅してきたかのようだった。
当時の毛並みは形がなく、乱暴に絡まっているだけだった。しかし、すぐにこの猫を含めた数匹は花屋の奥さんに拾われた。
毎日丁寧にお手入れして、やがて心を通わせるようになった。
いつも昼下がりの花屋の前のバラの桶に寄り添って寝ていた。
さくらを連れて逢いに行くことにした。
「今から猫に会いに行こう。」と言った。
でも、さくらは猫が何か分かっていなかった。
そこで両手を顔の前に出して、猫のようにニャーと鳴いてみた。
彼女はそれを見て笑みをこぼした。猫だと理解したそう。
日本語で猫と唱和する。
日本語は分からなかったが、おそらく猫という意味なのだろう。
“猫”それは彼女から教えてもらった、そして私が初めて覚えた日本語だった。
2012年の夏、猫を見に行く途中のマシュマロのような笑顔を私は一生忘れることがないだろう。
猫を見た彼女は、猫の顎をそっと撫でた。
いつもは横柄な態度の猫も、彼女の腕の中ではなぜかお行儀よくしている。
気持ちよさそうに目を瞑りながら、毛むくじゃらのお腹を見せて、さくらに優しく撫でてもらっている。
(続く)