【物語】僕とあなたの、思い出の花。(6)

「僕とあなたの、思い出の花」の第6話。
中国人の僕と、日本人のあなたと紡ぐ日々。

この記事を書いたのは?

楓橋徹

出身地:中国

私は中国の海浜都市から来て、現在東京の高校に通っています。この世界は広いので、何方でも行ってみたいです。ソローが書くワルデン湖、シェイクスピアの詩のロンドン、そして松尾芭蕉の徘句のような美しい夏に日本に来ました。暇な時、空想することが好きで、時々、自分が平和な時代に生まれて嬉しくなります。その反面、これから起こりうる戦争が心配です。また、昔の戦争のせいで、その国に住む人同士の中に誤解が生まれてしまうことがあります。しかし、私は子供の時に、違う国の人と触れ合うことがありました。生まれた国は違っても、その人の優しさに感動しました。
現在多くの日本人の友達がいます。中国人として、日中の友好交流が一歩近づいて心から願っています。今回は小説の中で、歴史の残した問題を違う視点から認識することができるといいなと思っています。私たちは生まれた国に関係なく、お互いに歩み寄っていきたいです

M

出身地:非公開

紹介文:私は作者のお友達です。今回初めて校閲をさせて頂きました。難しかったのですが、素敵な物語だったので書いている最中はすごく面白かったです。

僕とあなたの、思い出の花。


「白鳩!」
と頭上から彼女の声がした。見上げると、彼女は私が登ろうとしていた同じ枝に座って、足をくねくねさせていた。
「さくら、降りてきて?そこは危険だよ」
でも、またしても彼女は私の言ったことを理解していない様子だった。

降りてくるどころか、私を引っ張り上げるように手を差し出してきた。
私は彼女を見た瞬間、この手に触れたいと思った。
なんとも言えない気持ちの中、私は片手を伸ばして、その柔らかい手を握り、もう片方の手で丈夫そうな枝に捕まり、足で強く踏ん張って大きな木に登った。
2人で座れる広さのある枝だとは思っていなかった。
並んで座り、海を眺める。

夕日を中心に、海は一面金色の光に包まれた。

何層もの波が揺れ動き、海鳥のシルエットが水面を泳ぎ続けている。

遠くには白い貨物船や青と白の遊覧船が金色の光に包まれて、まるで地上の仙境のような海を描いている。
私たちは時々言葉を交わしながら、ずっと座って見ているだけだった。

私は中国語を、彼女は日本語を話す。

鶏と卵のようなものだが、お互い意味がわかっているようで、二人で大笑いをしてしまった。

夕日が完全に海に落ちて全く見えなくなるまで座っていると、街灯が点灯し、坂の上から下まで星の川のように広がり、私たちの頭上から遠くないところまで照らされた。
「そろそろ帰ろうか。」
私は彼女の手を取り二人で数を数えた。
「3、2、1!」
私たちは木から飛び降りた。

帰りの道はそこまで遠くない。もう少し長くいたいという気持ちは心に閉まっておこう。
家に向かって夜の街をゆっくりと歩いていく。

さくらは私の横で、聞いたこともないような童謡を歌い、私もそれに乗っかって時々、二、三音節を口ずさんだ。
野菜炒めの香りが路地裏に漂っていた。

どの家にも明かりが灯り、子供たちが走り回り、杖をついた老人が家路につく。
ふと、羽音が聞こえたので空を見上げると、昼間に広場で見たハトと同じハトの群れだった。

ハトはしばらくホバリングして、そのまま通りの端にある小さな家に飛んで行った。
家の窓から手が伸びてきて、敷居の下の鳩小屋を鉄のフックで開けると、ハトはみな白い風に合流して鉄の巣に潜り込んでしまった。蝉の鳴き声がキュッと小さくなり、時折吹き抜ける夜風と一緒になって、黄昏の歌を奏でた。
家に着くとママは食事を用意してくれていた。

おそらく、さくらが居るから以前よりずっと豪華な食事になったんだと思う。
夕食後、ママから「さくらちゃんを送ってきて」と頼まれた。私はさくらをドアの前までおくり、それから立って二階の階段から彼女が私に手を振るのを見守り、それからドアベルを鳴らした。
「また今度、大きな木へ行ってみる?」そんなことを聞く勇気がどこにあるのだろうか。
しかし彼女は笑顔でこちらを向いた。

まるで“いいよ”と言っているみたいに。
本当にそう聞いたのか分からないが、突然恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしながら階段をかけ登った。

私は家の前で腰が抜けたようにすっと座った。
ママが内側からドアを開けて「ここで何してるの?早く家に入りなさい。」と言って怒られるのを分かっていたから、私はすぐに立って家に入った。
家に入ると、なぜかマスクをしているママが、
「さてと、そろそろ宿題をしなさい。いつ終わるの?明日の授業までに終わらせられるの?大丈夫なの?」と私に色々質問をしてきた。
色彩のないあの部屋に戻って、あの退屈で光の下で日々同じ仕事をこなしていかなければならないのだ。
夜、いつものように窓を開けた。いつもと違うと感じたのは、吹き込んでくる海風が夏を帯びているように感じられたことだ。

(続く)

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