「核兵器は放射線を出す」って聞くけどどういうことだろう?
広島と長崎に落ちた原子爆弾は、爆発と共に放射能を撒き散らしました。
今回は、この「放射能」についてみなさんと一緒に知っていきたいと思います。
放射能と放射線ってなんだろう?
放射能や放射線という言葉はよく耳にしますが、一体どのようなものなのでしょうか?
放射能とは、放射線を出す能力のことを言います。
さらに、この放射線を出す能力をもった物質のことを放射性物質と呼びます。
下のイラストをご覧ください。
身近なもので表されるとわかりやすいですよね。
懐中電灯にたとえると、懐中電灯は放射性物質で、懐中電灯から出る光のことを放射線、懐中電灯の光の強さが放射能の強さとなります。
放射性同位元素
私達の身の回りにある食べ物、あなたが今着ているもの、今朝食べたものなど、すべての物は元素(原子)というもので形づくられています。
原子番号の同じ元素(原子)には、水素(H)や酸素(O)、炭素(C)など112種類あることわかっています。
元素(原子)の中には、そのままでは不安定なものもあります。
そのような元素(原子)は不安定なため、自然に壊れて放射線を出すことで、安定した原子に変わるのです。
この現象のことを核壊変と呼びます。
また、壊れた時にエネルギーとして熱を出します。
これのように自然に壊れて放射線を出す元素のことを放射性同位元素と呼びます。
放射線は身近なもの
放射線ってどれくらい身近なところにあるの?
私たちが暮らしている地球は宇宙の中にあります。
宇宙や太陽から放出される放射線が地球に降り注いでいるため、私たちは常に放射線を浴びて生きています。
宇宙以外からも、大地から、食べ物から、空気から放射線は放出されています。
例えば、食べ物には、カリウム40や炭素14などの放射性物質が含まれています。
1kgあたり、肉や魚には100ベクレル、米や食パンには30ベクレルのカリウム40が含まれています。
これらの食べ物などから取り込んだ放射性物質は、わたしたちの体内に存在しています。
しかし、体が代謝や排出を常に行なっていることと、放射能が時間とともに減少することから、体内の放射性物質はずっと減らずに蓄積していくということではありません。
放射線の透過について
放射線にはいくつか種類があります。
アルファ線(α線)、ベータ線(β線)、ガンマ線(γ線)、中性子線などの粒子線と、電磁波であるガンマ線及びエックス線(X線)です。
これらの違いは、物理学的性質、物質を突き抜ける力の強さや、物質と反応する能力の強さです。
中でも透過力の高いエックス線は、病院でレントゲン撮影、CT検査など、いろいろな分野で使用されています。
放射線量を表す単位は?
放射線量を表す単位で、人体への影響の度合いを表す「シーベルト」。
日本では1年間に平均1.5ミリシーベルトくらい被曝していると推定されています。
全身に7から10シーベルト浴びると、ほぼ全員が死亡します。
原爆からの放射性物質
広島と長崎に投下された原子爆弾には、ウランとプルトニウムが使用されました。
このウランやプルトニウムという原子は、質量が他の原子に比べ大きいので、安定した原子になるために自然に核崩壊をしています。
人工的に濃縮すると核分裂が連鎖的に起こり、多大なエネルギーを出します。
原子力発電所で使われている低濃縮ウラン、例えば3%濃縮ウランの1 グラムの熱量は石炭3トン分と同じ量になります。また、99%まで濃縮した放射性ウランをを利用したのが原爆です。
原爆による放射線ってどんなもの?
原爆は身近なものじゃないから、放射能の影響も身近なものとは違うよね…
原子爆弾は放射線を出します。
この放射線には、「初期放射線」と「残留放射線」があります。
初期放射線
初期放射線とは、爆発後1分以内に放射されたものを言います。
これが、身体に大きな被害をもたらしました。
特に、爆心地から1km以内で直接放射線を受けた人は、ほとんど亡くなりました。
初期放射線は、爆心地から遠くなるほど減少し、長崎では爆心地から3.5km付近で1.0ミリシーベルトにまで減少しました。
爆心地から4.0km付近の被曝線量は、胸のレントゲン写真を撮ったときに受ける被曝線量くらいとされています。
残留放射線
残留放射線とは、爆発後、長期にわたって放出されたものを言います。
放出された残留放射線のすべての量を100とします。
爆発後の24時間で、約80%が出ました。
例えば、爆心地での残留放射線を受ける量は、爆発直後とくらべると、その24時間後には千分の1になったという研究報告があります。
1週間後には百万分の1ということになります。
残留放射線は急速に少なくなっていったと言われています。
現在、原爆の放射能はどうなっているの?
現在の広島や長崎にある放射線は、地球上のどこにでもあるごく少ない放射線(自然放射線)と変わりなく、人の体にも影響を与えることはないと言われています。
広島と長崎、それぞれの影響は?
広島での放射線の線量と影響
爆心地から2.85km離れた場所で、ようやく胸のCTスキャン1回分ほどの放射線量とされています。
2.95kmで世界の1年間の平均の自然放射線量と同じレベルの放射線量です。
長崎での放射線の線量と影響
爆心地から2.85km離れた場所で、ようやく胸のCTスキャン1回分ほどの放射線量とされています。
3.25kmで世界の1年間の平均の自然放射線量と同じレベルの放射線量です。
最後に
原爆で放たれた放射線は、多くの人の命を奪い、生き残った人々の体を深く傷つけました。
また、環境を壊したり汚染しました。
核兵器の恐ろしさを少しでもわかっていただけたら幸いです。
核兵器が及ぼす多面的な影響について、きちんと考える必要があります。
参考文献